教えて!立命館宇治中学校・高等学校入試センター長・玉野 典明先生
帰国生を多く受け入れ、受け入れ体制やカリキュラムが充実している立命館宇治中学校・高等学校 の入試センター長の玉野 典明先生 に、お話を伺いました。
※インタビューは、2016年6月の内容です。
帰国生受け入れの経緯について
創立時から「国際教育」がコンセプトの柱
寺岡 :帰国生の受け入れに至るまでの経緯について教えてください。
玉野先生 :「立命館宇治」という学校が、1994年に創立しました。その最初のときから、コンセプトとして「国際教育」 を柱にしていました。
必然的な流れで、海外の国際入試をやろう、帰国生を受け入れてやっていこう、という舵をきりました。
立命館宇治のコースについて
真の国際人を育てる「IMコース」と「IBコース」
玉野先生 :「帰国生に焦点を当てている」 といえますね。
「『立命館宇治』に行けば、海外で英語で勉強していたものからディプロマを取って、海外の大学へ行く実績もあるし、英語力を鍛え直せる英語のコースもある」ということで、国際的な学びのトレンドと水準を見ている学校 であろう、ということは伝わると思います。
「IMコース」 は1年留学 があり、これはもともと国内生のためのものですが、例えばインターナショナルスクールに数年しか行ってないため、非常に中途半端な英語力のまま帰ってきた人にもピッタリともいえます。
「IBコース」 のスゴいところは、学びのスピリッツがあって、受験がゴールではありません。論文型の試験やインタビュー型の試験に対応するために、IBコースの生徒たちは、討論 ・ディスカッション とプレゼン を熱心にするんですよ。
寺岡 :ディスカッションやプレゼンを指導する先生はどんな方ですか。
玉野先生 :IBコースのスタッフの半分くらいがネイティブ だと思いますけど、毎年研修がありますよ。ジュネーブにあるIB機構の本部が教員を集めて、常に一定の水準を維持しています。
幸い、本校は日本にずっといる人たちが授業しているので安定していると思いますよ。
IMコース
1年間の留学を必須として、卓越した英語力と高い学力を養成するコースです。 IBコース 世界中の大学への出願入学資格を得られる国際バカロレア・ディプロマプログラム(IBDP)に基づいて、1年次から国語以外の全教科を英語で学習。日本の高校レベルをはるかに超えた世界水準の探究学習によって、海外大学での学問研究にも耐えうる英語力、知力、探究心を育てるコースです。
(立命館宇治中学校・高等学校ホームページ より引用)
IBコースのある他校との違いについて
日本の学校によるIBコースだから、丁寧なサポートで失敗がない
玉野先生 :本校は日本の学校で、3年間通えば日本の卒業もできる んですね。関西にもいくつかインターナショナルスクールでIBを取れる学校がありますが、それはインターナショナルスクールの卒業ということですよね。そういう違いがまずあります。
それから、帰国生であれば、母語は日本語ですよね。お父さん・お母さんもたいていそうですよね。学校で進路指導を受ける場面があると思いますが、本校はカウンセラーが日本人 です。わかるまでちゃんと面談して、進路指導も丁寧です。
さらに、IBディプロマのスコアが取れなかったとしても、日本の学校の単位として認めて、そして立命館に内部進学 できます。失敗がないということですね。
寺岡 :至れり尽くせりですね。
高校卒業後の進路について
内部進学だけでなく、早慶上智のAO入試を目指す生徒も
寺岡 :進学先は、立命館大学 や立命館アジア太平洋大学(APU) が多いのでしょうか。
玉野先生 :多いですよ。立命館大学とAPUと合わせると、今年は80%ちょうどくらいです。残りはあえて立命館以外の進路を選んでいるといえますね。
特徴を表すのは、早慶上智 のあたり。受けるのはたぶんAO入試 でしょう。帰国生も結構混じっているわけです。
帰国生に希望すること
現地でしっかり適応してやることが、後々の実りが大きい
寺岡 :帰国生の方が、現地にいる間に身につけていて欲しいことや学んで来て欲しいことは何かありますか。
玉野先生 :それぞれの置かれた条件で、とにかく適応して頑張ってみる、ということじゃないでしょうか。帰国生は「行ってから大変、帰ってから大変」という時代は徐々に緩和され、引く手あまたになっています。
だから、現地でしっかり適応 してやっていた方が、後々実りは大きいと思います。
帰国生へのアドバイス
現地での学びを一生懸命に、そして英語力のメリットを上手く生かそう
寺岡 :最後に、立命館宇治中学校・高等学校を受験するにあたって、何かアドバイスがあれば教えていただけますか。
玉野先生 :まず一般論をいえば、現地での学びを一生懸命やること 、それが評価されます。英語圏であれば幸いですから、英語力についてのメリットを海外にいる間に上手に生かしておいた方が良い と思います。
寺岡 :検定やスコアを取っておくということですか。
玉野先生 :そうです。良いときに結果をちゃんと残しておいた方が良いですね。
立命館宇治中学校・高等学校について
立命館宇治中学校・高等学校
〒611-0031 京都府宇治市広野町八軒屋谷33番1
TEL: 0774-41-3000 (代表)
ホームページ:http://www.ujc.ritsumei.ac.jp/ujc/
教えて!梅花高等学校副校長・六室 匡司先生
大阪府で帰国生に人気のある地域・北摂の梅花高等学校 の副校長の六室 匡司先生 に、お話を伺いました。
※インタビューは、2015年7月の内容です。
帰国生の受け入れについて
試験の結果だけで判断せず、基本的には希望する生徒に対しては、柔軟に対応する
寺岡 :ホームページを拝見しますと、帰国生の個別枠はなくて、一般生といっしょに編入試験 を受けていただくとありますね。
六室先生 :はい。今のところは国語・数学・英語ですが、私どもの学校には、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい 」というスクールモットーがあります。それに基づいて試験の結果だけで判断せず、基本的には希望する生徒には、柔軟に対応します。
寺岡 :英語以外ができなくてもよいということですか。
六室先生 :程度にもよりますが、学習面で遅れている生徒に対しては、入学後にそれを補強するために、補習 するような制度を検討しております。
寺岡 :大阪で帰国生に人気がある地域として、貴校がある北摂 が挙がっていますね。
六室先生 :そういったニーズもありますし、夏には豊中の姉妹都市・サンマテオからの留学生を本校で受け入れる予定になっています。また、本校には保護者が欧米・アジア各国の国籍という生徒も多く、帰国生を受け入れやすい素地 があります。
寺岡 :すごいですね。
梅花高校の教育方針について
キリスト教に基づく「愛なる女学校」として、他者への愛と奉仕の精神を重んじている
六室先生 :本校はキリスト教の中でも会衆派の学校で、愛・平等・自由 を重んじています。だから、帰国生の方にも違和感は感じないと思います。よい意味での「個人主義 」が学校の風土にありますので。
寺岡 :それが学校の特長で、他校との差別化のポイントでもあるわけですね。
六室先生 :そうです。本校は、1878年に創設されたのですが、創設者・澤山 保羅( さわやま ぽうろ ) 先生が米国留学し、その際に学んだ欧米の考え方を先駆的に学校の理念の中に取り入れ、それが脈々と今につながっているんです。
コース選択について
帰国生だからといって、必ず国際コースに行く必要はない
寺岡 :帰国生が入学するとき、コースは選べるのでしょうか。
六室先生 :はい、選べます。 帰国生だからといって、必ず「国際コース 」に行く必要はありません。「特進コース 」に行って国公立大 を目指すもよし、「医療看護コース 」に行って看護師 になる子もいます。バレエが得意ならば、本校独自の「舞台芸術コース 」から宝塚歌劇団 を目指すというのもありです。
寺岡 :意外ですね。
六室先生 :それは、先ほどの「自由な学校の風土 」が影響しているのではないかと思います。「自分の将来なので、必ず自分で選んで欲しい」と思っています。
英語力の維持について
ディベートやディスカッションができるレベルの維持を目指す
寺岡 :将来の進路とは別に、「せっかく海外で身に付けた英語力 は維持したい」という希望はあると思うのですが。
六室先生 :ありますね。そのためにネイティブの先生 や留学生 といっしょに、日本語禁止の“English Communication Room ”で、週に何度か昼飯を食べよう、という取り組みをしています。また、今年度より英会話学校のベルリッツ と提携 して、教育連携を結び、放課後に特別講座を組んでいます。単に会話にとどまらず、ディベート やディスカッション ができるレベルを目指しています。
生活面でのフォロー体制
異文化の生徒(帰国生・留学生など)を受け入れる素地は、他校に比べても整っている
寺岡 :帰国生が文化の違いで不安に思ったり、疎外感を感じたりすることがあると聞きますが、そのあたりはどのようにフォローされているのですか。
六室先生 :もともと本校は、「異文化の生徒を受け入れる 」という気風があります。たとえば「国際コース 」のコースモットーは、“Learn from Others, Learn from Differences (人から学ぶ、違いから学ぶ)”というものです。それに加えて(前出の)スクールモットーもありますので、帰国生や留学生を受け入れる素地は、他校に比べても整っていると思います。
帰国生に希望すること
海外で身につけた風習や文化などを梅花の生徒に伝え、互いの視野を広げて欲しい
寺岡 :帰国生に海外で学んでおいて欲しいことは、どのようなことでしょうか。
六室先生 :普通では経験できないことが経験できたのですから、私は思いっきりその国の文化に染まってもらってよい と思っています。海外で身につけた風習や文化などを、梅花の生徒に紹介し、互いの理解を深めながら梅花全体のグローバル化 に寄与して欲しいですね。
帰国生の進路について
必ずしも、外国語系の進路とは限らない
六室先生 :帰国子女の多くは、進学先として一般には外国語系の大学や学部が多いです。英語1教科入試 や帰国子女枠 がある大学が多いというのもその理由の一つです。
寺岡 :しかし梅花の場合は、全員が外国語志望というわけではありませんよね。
六室先生 :そうです。本校は指定校推薦枠 も多く、併設大学 もあるので、医療系 や児童教育系 などの外国語と全然違う学部を希望する生徒も今後は増えていくと予想されます。さらには、帰国子女枠などの特殊な受験で進学する生徒は一般教養系が弱く、進学後や就職後に苦労する傾向もあるそうです。
寺岡 :そのためには何をしておけばよいのでしょうか。
六室先生 :やはり英語以外の教科でも、国語や数学は中3レベルの内容は理解しておく必要があると思います。本校に入学後は、どの教科も補習を行い、少なくとも小6または中3レベル にはします。
寺岡 :わかりやすいお話でした。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
今回の六室先生のお話をお聞きすると、梅花高校では、帰国生に対して、「語学のスペシャリスト」というより、「バランスの取れた教養人 」の育成を目指しておられるように感じました。
女子校 なので、女子生徒が自分の個性を損なわず勉強するには、最高の環境ではないかと思います。
梅花高等学校について
学校法人 梅花学園 梅花中学校・梅花高等学校
〒560-0011 大阪府豊中市上野西1-5-30
TEL:06-6852-0001 (代表)
ホームページ:http://www.baika-jh.ed.jp/