少し古くなりますが、2018年のベネッセ教育研究所の調査によると、中3生に「英語が得意か苦手か」聞いたところ、得意と苦手は半々だったそうです。そして「苦手」と答えた生徒に「いつ頃から苦手だと感じるようになったか」の結果が以下のグラフです。
英語が苦手な子供の半数は中1でつまずく
実際、中2、中3で入塾される方で「英語が苦手」と言われる生徒さんにいつごろからわからなくなったか聞くと、ダントツで
「中1の2学期ごろ」
という答えが返ってきます。
つまずく原因はどこか?
中1の1学期の文法はせいぜい”I am” “You are” “This is”のbe動詞レベルで済みます。
しかし2学期になると「一般動詞」が出てきて、be動詞との区別で混乱し、更に「三人称単数現在」という「人称」(これがなかなか理解できない)と「数量」と「時制」の3つの概念をいっぺんにぶっこまれて大パニック!
で、迷子になってしまう人が23.3%というわけです。
つまずきのタイミングが早まる可能性も
ただし、これは教科書改訂以前の話です。1年前に中学校の教科書が改訂されたことで、最初の混乱の元である「一般動詞」が教科書の最初から出てきます。
よって、苦手になる時期のピークは中1前半にシフトしていくことが予想されます。
小学生のお子さまをお持ちの方へ!
ここで小学生のお子さまをお持ちの方に、特に上にご兄弟がいらっしゃらない方にお伝えしたいことは
中学3年間の英語がスムーズに進むかどうかは「中1がカギ」ということです!
中3で「英語が苦手だ」と言っている生徒の約半数は中1の間に「苦手だ」と感じているのですから。
小学校と中学校の英語指導のミゾ
「中学1年生が要注意なら中1に気を付ければいいんじゃない?」
と思われるかもしれませんが、小、中の英語の指導には大きな溝が存在します。
2020年小学校教科書改訂
2020年の小学校の教科書改訂によって、5年6年の外国語活動が3年4年にスライドし、5年6年は教科として英語を学ぶことになりました。
親世代が学んできた「読む」「書く」英語に「聞く」「話す」が加わり、コミュニケーションとしての英語を学ぶことに力を入れています。
文法を教えることはせず、「聞く」「話す」がメインです。書くことはあってもスペルを覚えさせることはないようです。
英語を楽しく勉強
教科なので成績がつくものの、私が取材した限りではテストは実施していないようです。
小学英語の方針は、「英語に苦手意識を持たせないこと」「英語でコミュニケーションをとることの楽しさを感じさせること」です。
2021年中学校教科書改訂
中学校の英語も教科書改訂によりコミュニケーション重視にシフトしています。
しかし、小学5,6年で出てきた単語(約600~700語)は「知ってるよね?」のノリで中1の教科書にバンバン出てきます。教科書では小学校で習った単語として別枠で表示されています。
実質約2倍に増える単語数
習った…といっても、「見た」とか「聞いた」のレベルなんですけどね。しかも中学校で習う単語数も今までの1200語から1600~1800語に増えています。つまり、小学校で出てきた(が覚えてはいない)単語も含めると1000~1300語増えたことになるわけです。
出だしの進みが4倍速⁈の文法
文法も小学校ではいっさい説明はされていませんが、表現として教科書に載っています。be動詞、一般動詞はもちろん、中1最後に学習する過去形や2年生2学期に学習する動名詞(enjoy ~ing)も出ています。
これまた「知ってるよね?」と言わんばかりに、中1しょっぱなから今までは1年生中盤~終盤に学習した文法が出てきます。
You-学舎がある京都市、茨木市で採択されている「東京書籍」の中1教科書の出だしの文法の新旧比較がこちらです。
2単元分、大体1学期中間テストの範囲になるくらいの内容ですが、旧版はbe動詞のみに対して新版はbe動詞、一般動詞、can、疑問詞と内容的には4倍のことが詰め込まれています。
楽しかった英語の勉強が一変⁈
中学に入るまでに外国語活動も含めたら少なくとも4年間英語を触っているとはいっても、中学に入った途端に覚える単語、学ぶ文法が目の前にドンと積み上げられます。小学校で「嫌いにならないように」と頑張ってきた先生方の努力を水の泡にするレベルのギャップです。
しかし、中学校の先生が悪いのではなく、これは私たち学習塾にも同じことが言えますが、結局先には高校入試、ひいては大学入試があり、それを見据えて単語を覚えさせ、文法も理解させなければならないのです。
店先で軽口をたたくレベルのコミュニケーション力をつけるのであれば、小学校の延長でたくさんの表現を聞いたり使ったりで十分ですが、目標はそこではなく、子供たちが社会に出るころ、今以上にグローバル化が進んでいる世の中で、堂々と自分の考えを発信できることにあります。そのためには豊かな語彙力と、わかりやすい言葉の組み立て(文法)は必要です。
「うちの子にそんな大それたことはできっこないし…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、子供の可能性は無限大です。本人がチャレンジする前に可能性の芽を摘んでしまうのはもったいないことです。
溝は“はまる前”に回避をすべし!
ともあれ今は、単語の暗記と文法重視の勉強からコミュニケーション力育成へと向かう過渡期であり、小学校と中学校の英語教育の間には溝があるのは事実です。
溝にはまってから抜け出すには労力が要ります。溝の前、つまり小学校の間に助走をつけて飛び越えるのが一番ではないでしょうか。
小学校のうちにやっておきたいこと
書かなくていいから英語のインプットとアウトプットを!
文法はさておき、まずはボキャブラリーを増やすことです。単語が書けるレベルまでは求めない方がいいです。本当に英語ギライになったら困りますから。
単語のスペルと意味と音をセットで確認(インプット)して、意味(とできれば発音)が言える状態(アウトプット)までで大丈夫です。大事なのはスペルと音と意味が連動していることです。
単語がわかることで英語に自信が出てきているようならば、教科書にでている基本センテンスを単語と同じようにインプットをしてからアウトプットの順で繰り返してみてください。
今は小学生対象の英語アプリも豊富ですし、教科書に発音を確認するQRコードがついているものもありますから、お金をかけずに手軽に利用ができます。
「覚えなければ!」という意気込みやプレッシャーは無用です。時間や分量を決めて毎日続けることが大切です!
目標設定が必要なら英検がおススメ
とはいうものの、必要に駆られないと長続きしないものです。クリアすべき目標設定として英検をお勧めします。
5級は中1レベル、4級が中2レベルで、両方とも試験問題はマーク式のみ、つまり英語を書く必要がありません。単語や表現の知識を増やして、リスニングを練習することで、先ほどのインプットとアウトプットの練習ができます。
試験に合格する、級を上げていくことでお子さまの自信につながります。
まとめ
中学英語は中1で決まる
中1前半でつまずかないためには小学校のうちの準備が大切
アプリを活用、英検もお勧めです!
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